大工道具に生きる / 香川 量平
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合印(さしがね実技より)古い廻番の板図面直井棟梁の建築古図面展にて古い尺杖(年号が入っている)109を打つ場合を「送り7本」という。タルキの間隔は9寸3分となる。タルキの寸法は1寸8分角か2寸角である。このタルキ割の寸法を尺杖に書き付けておくと大変に便利である。昔から大切な尺杖は決して反対に大工は立てない。尺杖の木口が痛むので、5分程の柄をつけ、正確な尺杖を維持するのである。 尺杖や指金に宿る神様は、神話に登場する「八やごころおもいかねのかみ意思兼神」で手斧はじめの儀式の主祭神でもある。この神様は高天原では重要な局面で智恵を出して事態を解決したと伝えられ、智恵が豊かで思慮深い神であるとされ、現在では科学者やエンジニア達の崇敬を集めている。古い昔から「門かどぐちかみ口神」という玄関を守護するという神がある。昔の人々は玄関から疫病や災厄が入ってくると考え、そこを守る神は「櫛くしいわまどがみ石窓神」であると古事記は記している。しかし、四国の大工はこの神は「門もんさつがみ札神」であると昔から伝えている。この神は門札の上に座して、正月には年神を迎え、お盆には先祖の霊を迎え、常々には玄関で監視している。大工が門札を作る時は決して上場を削らない。門札神が滑り落ちない為とも、家の主人の出世の芽を削り取らない為ともいわれ、鋸挽きままで作る。門札の寸法は魯般尺の吉寸で作り、玄関に向って右上に取付けるのが吉である。    (削ろう会会報63号 2012.09.03発行)

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