大工道具に生きる / 香川 量平
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にて量り見るに六度運びて曲尺五尺七寸六分を去さり、余り四寸四分あり、此を又天星尺に引付け見れば即ち、義の字に当る是に依りて吉寸とす。横幅もこの例に倣ならうべし。蓋ただし、門口に限らず房室、窓、倉庫、或いは萬箱、大黒柱、爐いろり縁、竃、掛物は全て此の天星尺の吉寸を用いるときは其の家、富栄え子孫長久なるべし。 財字、此の寸は證文帳、箱、掛物、棟木、大黒柱、竃の釣木等に用いて幸福重りて吉也。 ロくでん傳にいう千石以上の人は吉也、また下々は商人職人百姓は吉、山伏出家醫師は凶也。 病字、此寸は万事に用いて凶あくし山林の木を切っても凶也破れを生ず武家商人百姓此の寸を用いる時は金銀の損失有也。故に凶とす。神社仏塔山伏修験者、醫師薬種店に用いて繁昌利益有也。但ただし、寺院神社は好まざる者有、此の寸都すべて病人集まる事を主る。 離字、此寸は金銀名刀證文手形掛物田畑古券宝物等入置箱此の寸なれば口くぜつ舌争ひ出来破れを生じ損耗多し、又盗難火失あるべし品此寸なるときは猶なおさら更箱の寸改め入るべし。又、爐縁、竃此の寸なれば女房と不和か眼病生ずるか或は乱心者出来るか子供に縁なし、左さな無れば他国して住所に別るべし。金銀散失、職人は弟子に縁無く武士は主人に縁無し。 義字、此寸は金銀證文宝物入爐ろならび並門戸口賽さいせんばこ銭箱花生掛物違棚の類たぐいに用ひて吉也。然れども武家は系図を失ふ事あり慎むべし。 此寸を用いるときは四しみん民とも繁昌すべし又男子に歌道秀才萬事芸術を好み出しゅっせい情する人出しゅっしょう生すべし故に分て武家吉相也。町人百姓は勿論商人は、金銀巡れとも子孫に口争争ひ有未に損失し衰ふ。口くでん傳に曰く、諸掛合立引出入に此の寸に当たる品物立会時は必ず勝もの也。 官字、此の寸は高家高位の人か何れ世上名の顕あらわれたる人用ゆる時は吉也。無位下げせん賤の人用いて凶也。若もし此の寸に切たる家には以前出家沙しゃもん門出るは、若じゃくえん縁有か又遠国より来る人か也。今人は眼病ふらく病気有也。貴人の書たる古物の類と得る事有未に他人にわたるべし。此家の主力量あるべし又大酒と好み家を乱すか、左もなくとも家業に出しゅっせい情する事、なかるべし。 劫字、此の寸を用いる時は、非義非道の人出生するか無理に死る事有也。若もし左無き時は金銀の損亡有。牛馬の類立去る。此寸用いる時は諸人百難に合あいもの物を失ひ口くぜつ舌争い有りて散財を主る也。 害字、此寸は始繁昌すると雖いえども後は金銀薄くして財宝に離れ田地を失ふ事有。病難口舌争ひ事あるべし、頓とんし死頓病又は横難に逢事を主る女房に縁なく金銀のことに付き心配損失すべし。又家の内鳴めいどう動する事あるか柱一本下ること有。是これすなわち則未に破れを生ずる兆也。 吉字、此寸は百事発達の象あかち也。四民とも田畑屋敷に縁有、家造其外吉事続き命長し。武家は家内に下人を増事ありて吉也、然りと雖いえども一家に少しの障りあり大望事見合わすべし。下民は金銀に縁有田地等望事叶ふ。万事吉也。旅行に少し争ひの兆有とも吉也。此寸吉なれども口舌世話事多きことを主る然れども未々目出度し。115 魯般尺について「小沢賢二氏」の説明では、 財、此の寸は吉相の木星にあり、これが北斗第一の貧こんろんせい狼星の延長線上に位置すると、財に富み、その功徳が普く行き渡る。 病、此の寸は病の凶相の土星にあり、病や難事から免れがたい。これが北斗第二の巨こもんせい門星の延長線上に位置すると、到るところ放蕩の限りを尽し、病を得て身は退きて、はてまた淫みだれて男女の災いを招く。 離、この寸の離は凶相の土星にあり、引き離される事は避けがたい。これが北斗第三の禄ろくそんせい存星の延長線上に位置すると、土地を離れざるを得ず、夫婦も離縁し、男女は故郷を失う。 義、この寸の義は吉相の水星にあり、これが北斗第四の文もんこくせい曲星の延長線上に位置すると君主の來臨に等しいものとなり、その家は大いに富み、家族は大いに名をあげる。 官、この寸の官は吉相の金星にあり、これが北斗第五の武むごくせい曲星の延長線上に位置すると、その家は文筆誉れ高くして栄え、財を得て子孫は代々にわたって名声を残す。 劫、この寸の劫は凶相の火星にあり、災禍に苦しむことは避けがたい。これが北斗第六の廉れんちょうせい貞星の延長線上に位置すると、公務を放逐されて、財を奪われ、独り身に追いやられ、災禍は人との逢瀬も与えない。 害、この寸の害は凶相の火星にあり、盗み侵される。これが北斗第七の破はぐんせい軍星の延長線上に位置すると、第三者によって財産は獲られて散財し、公務を放逐されて、財を奪われ、独り身に追いやられ、病はこの家から離れることはない。 吉、この寸の吉は吉相の金星にあり、家は興隆する。これが北斗第八の輔ほじゃくせい弱星の延長線上に位置すると、家は金銀に富み、到る所から資材や土地がもたらされ、子孫は代々繁栄する。 以上が小沢氏の解説であるが、これは中国で古歌として存在していたと解せられる。 中華民国の台湾の魯般尺は、1尺4寸1分の直尺で表側は「門公尺」で裏側は「丁蘭尺」と呼び、門公尺

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