(左から)丸頭斧、紀州角頭斧、信州型枝打斧鉞の七つ目について説明する著者つんぼの鉞割斧型の斧(著者蔵)中国の石斧46移入された型が見られるが、純土佐型は曲線美が豊かで、一種の風流味を与える美しい型であります。 鉞や斧の胴に刻まれている筋を「流し目」とも「脂ぬき」とも呼ばれていますが、裏側の胴に刻まれている三本の筋は「み」、表側の四本は「よ」で「みよけ」となり、「魔よけ」の意味と昔から言われています。昔、深山で大木を伐採する杣人たちに危害を加えにきた魔物に対して、この「七つ目」が法力を放って消滅させ、危険を防止させるという護符であり、伐採する大木の霊に捧げる呪文であるとも言われています。 高知県では600年の昔、鍛冶屋が斧や鉞に「七つ目」を入れだしたと言い、当時の迷信深い世相としては無理からぬことであったのでしょう。この「七つ目」は古代天神(稲荷大明神)に伝えられている話によると、正式の「七つ目」は鍛冶屋が、神前で早朝刻み込んでいたと言うのですが、現在では略されています。 この「七つ目」について讃岐の「信安」という名人鍛冶は杣人が深山に入り、大木を伐採するとなると、木の精霊に負けて伐採することができなくなるという。鍛冶屋は、斧や鉞に七人の武将を護符として刻み、杣人が木の精霊に負けぬように御性根を刻んであると「信安」は言ったが、「七つ目」は、三者の神と四天王だと言った古老の鍛冶屋もいる。三者の神とは三天王で、摩利支天、弁財天、大黒天である。四天王は四方を守る護法神で、持国天(東方)、増長天(南方)、広目天(西方)、多聞天(北方)であるとも言ったが、「信安」は四天王は、源頼光の家来である、渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、ト部季武であるとも言った。三木市の坂田カンナに弟子入りしていたという鍛冶屋は、「七つ目」について「身を避ける」と三と四の護符を刻むのだとも言った。いろいろな説があって興味深い。(削ろう会会報27号 2003.08.11発行)
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