大工道具に生きる / 香川 量平
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昔、地固めに使用されていた土突著者が建てた住宅(香川県観音寺市)地固めの様子(春日権現験記より)86たびに酒を振る舞う。大黒柱の基礎の突き固めは最終に行い、大工が指示した重量のかかる柱や大黒柱は入念な地じつき搗を行う。 地固めの道具に蛸土突というのがある。大蛸や小蛸である。これらは工事中、適材適所で使用した。この土突は反対にすれば、蛸の形に似ているところからこの名がある。 『モースの見た日本』という書籍の中に、1877年6月横浜の運河の入口で人間杭打機があって、それに見入ったと日記に書いている。杭打機とは地搗の蛸土突であったのである。昔、東北に「モンキ突」と呼ぶ土突があり、杉丸太で櫓を組み、櫓の上部に滑車を取り付け、中央部の心棒を綱で巻き上げ、その綱に手綱を数十本取り付け、男衆が引き上げては落し、地固めを行っていた。その手綱引きに歌うのが相馬土搗歌である。「はあ、ここは大事な大黒柱、頼みますぞえ、エーコラ、みなさまに、ハーヨイショ、ヨイショ」という歌である。別名七之助音頭と呼ばれた。七之助という地固め専門の仕事師が音頭を取りながら家の基礎や堤防の地固めに各地を渡り歩いたので、今にこの音頭を七之助音頭と呼んでいるのだという。 (削ろう会会報44号 2007.12.24発行)

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